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名古屋高等裁判所 平成11年(行コ)13号 判決 2000年7月25日

主文

一  原判決主文第二項を次のとおり変更する。

二  被控訴人愛知県教育委員会委員長に対し、愛知県公立小中学校教職員に関して株式会社東海銀行との間に締結している給与の口座振込に関する協定の履行及び債務その他の義務の負担の中止と右協定期間経過後の協定の更新、更改の禁止を求める請求の内、平成一〇年一二月二六日から平成一二年四月二〇日までになされた分の中止若しくは禁止を求める部分は却下する。

三  被控訴人愛知県知事及び同愛知県教育委員会教育長に対し、愛知県公立小中学校教職員の厚生諸費控除に関して、被控訴人財団法人愛知県教育職員互助会に対して交付されるべき補助金の支出の執行の中止を求める請求の内、平成一〇年一二月二六日から平成一二年四月二〇日までに支出が終わった分の中止を求める部分は却下する。

四  控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は第一、二審とも控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

1  原判決主文二項を取り消す。

2  被控訴人愛知県教育委員会教育長(以下「被控訴人教育長」という。)は、愛知県公立小中学校教職員に関して、株式会社東海銀行との間に締結している給与の口座振込に関する協定につき、平成一〇年一二月二六日以降期限が到来する履行及び債務その他の義務の負担を中止し、かつ、右協定期間経過後、協定の更新、更改をしてはならない。

3  被控訴人愛知県知事及び同教育長は、愛知県公立小中学校教職員の厚生諸費控除に関して、平成一〇年一二月二六日から同一四年三月三一日までの間に、被控訴人財団法人愛知県教育職員互助会(以下「被控訴人互助会」という。)に対して交付されるべき補助金の支出を中止しなければならない。

4  被控訴人a、b及び同互助会は、各自、愛知県に対して、一八七二万三〇〇〇円及びこれに対する平成七年二月二四日から支払い済まで年五分の割合による金員を支払え。

5  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

第二事案の概要

一  事案の概要は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の「第二 事案の概要」(原判決五頁九行目冒頭から同五六頁一〇行目末尾まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二〇頁七行目「原告らは、」の前に行をかえて「(第一審請求)」と付加する。

2  同二一頁八行目末尾のあとに改行して次のとおり付加する。

「七 本件は、控訴人らが原審で求めていた前項の請求中、原審が住民監査請求の前置を経ていないこと及び差止の利益がない等として却下した部分を除外した部分に限り一部控訴した事案、即ち1 愛知県公立小中学校教職員に関する本件協定の平成一〇年一二月二六日以降の履行、更新、更改の差止、2 平成一○年一二月二六日以降同一四年三月三一日までの間愛知県の被控訴人互助会に対する厚生諸費控除制度についての補助金の支出の差止及び3 平成六年度に愛知県から被控訴人互助会に愛知県公立小中学校教職員の厚生諸費控除に関して支払われた補助金は一八七二万三〇〇〇円を下らないとして一八七二万三〇〇〇円の損害賠償又は不当利得の返還請求をしたものである。」

3  同二三頁四行目冒頭から同二七頁二行目末尾までを削除する。

4  同二七頁三行目「三」を「二」と改める。

5  同二八頁一〇行目冒頭から同二九頁六行目末尾までを削除する。

6  同三一頁五行目冒頭から同三二頁二行目末尾までを削除する。

7  同三二頁三行目「四」を「三」と改める。

8  同三三頁六行目冒頭から同八行目末尾までを削除する。

9  同三五頁二行目冒頭から同三行目末尾までを削除する。

10  同三五頁四行目「五」を「四」と改める。

11  同三五頁末行「通貨払いの原則及び直接払いの原則」を「通貨払いの原則、直接払いの原則及び全額払いの原則」と改める。

12  同三六頁八行目「何ら形で」を「何らかの形で」と改める。

13  同四二頁六行目冒頭から同四四頁五行目末尾までを削除する。

14  同四四頁六行目冒頭から同五六頁一〇行目末尾までを次のとおり改める。

「五 補助金支出の違法性

(控訴人らの主張)

自治法二三二条の二は、普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、補助をすることができると規定する。公益上の必要の有無の判断は全くの自由裁量行為ではなく、公益目的の不存在、動機の不正、平等原則違反、比例原則違反など裁量権の濫用・逸脱があれば、補助金の交付は自治法二三二条の二に違反すると解されるところ、本件厚生諸費控除制度に対する補助金の支出は、以下の理由により裁量権の濫用・逸脱があり、違法というべきである。

1  地公法二五条二項違反

この点に関する主張は、原判決四五頁初行冒頭から同四六頁八行目末尾までと同一であるから、これを引用する。

2  公益目的の不存在

本件厚生諸費控除事業は、地公法四二条が予定する、職員の健康管理、レクリエーション施策、保養施設の設置、住宅取得援助等の福利厚生事業とは性格を異にし、本来、職員団体自らが行うべき職員給与からの職員団体組合費などの天引処理事業である。したがって、本件厚生諸費控除制度は教職員の便宜に資する制度であるとはいえず、又同事業の重要性、緊急性もないことは明らかであるから、厚生諸費控除事業に公益目的は存在せず、補助金行政に認められた裁量権を逸脱して補助金を交付するもので違法である。

3  不当労働行為

この点に関する主張は、原判決四六頁一〇行目冒頭から同四八頁二行目末尾までと同一であるから、これを引用する。

4  独禁法違反

この点に関する主張も、原判決四八頁四行目冒頭から同四九頁八行目末尾までと同一であるから、これを引用する。ただし、原判決四九頁初行末尾のあとに次のとおり付加する。

『この点、被控訴人らは、トラブル発生の際の処理上、県内に多数の支店を有する東海銀行に限定するのが便利であること、手数料が免除されることを理由に、東海銀行に限定する必要がある旨主張する。

しかし、給与振込用のA・B口座は東海銀行以外の金融機関にも設置されているが、A・B口座で振込不能の事態が発生した場合、速やかに処理され、さしたるトラブルは発生していないこと、仮にC口座が東海銀行以外の金融機関であったとしても、銀行間のオンラインにより迅速な処理が可能であるので、C口座を東海銀行に限定する理由はない。又、より多くの金融機関を利用できるようにした方が教職員の便宜に資することは明らかである。さらに、厚生諸費の振込に関して特別に手数料が免除されたのは、厚生諸費控除用のC口座が東海銀行に限定されことによって、同銀行に独占的利益が約束されたことの見返りであったというほかない。以上のように、厚生諸費控除用C口座が東海銀行に限定された理由は殆ど成り立たない。』

5  動機の不正

本件厚生諸費控除制度は県の給与振込制度と一体のものとして給与計算システムに組み込まれているが、これを直接県の電算で厚生諸費も控除するとすればあまりにもあからさまに地公法二五条二項に違反し、不当労働行為性も明らかになるところから、県教委はこれを回避するため、右制度を外見上県の事務から外すため被控訴人互助会の事業として行わせ、全額補助金によって運営させているものである。したがって、補助金の支出は動機において不正であり、資金補助行政において認められた裁量の限界を超え違法である。

6  平等原則違反

福祉及び利益の保護制度の設定と実施は適切、公正の原則に基づいて行われねばならない(地公法四一条)。しかるに、被控訴人互助会の会員のうち、県教委事務局職員、県立大学教職員及び給与振込制度を利用しない会員は本件厚生諸費控除制度の対象外とされているため、同制度を利用できない。又、補助金は右対象外者には還元されない。職員間に均衡を欠き会員同士に不平等が生じる本件厚生諸費控除制度は被控訴人互助会が行うべき公正、適切な厚生事業とは言い難く、地公法四一条違反である。

7  比例原則違反

この点に関する主張は、原判決五〇頁六行目冒頭から同五一頁八行目末尾までと同一であるから、これを引用する。ただし、原判決五一頁八行目末尾のあとに改行して次のとおり付加する。

『 本件厚生諸費控除事業が稼働した平成七年二月以降、県から被控訴人互助会に交付された厚生諸費控除事業補助金は毎年度約七五〇〇万円であって、いじめ・登校拒否対策等推進事業費(甲四一)、外国人子女教育推進事業費(甲四一)、その他県教委の主要事業予算(甲四一)と対比しても、その規模は軽微なものではなく、特に、厚生諸費控除の毎月処理費約五四六万円について、人件費、コンピューター減価償却費は僅かな額で、これに企業利益を加えたとしても桁違いに廉価で処理できる筈である(甲三四)。しかも、補助金によって得られる効果は、本来、厚生諸費控除制度を利用している職員団体が自ら処理すべき組合費、保険掛金などの徴収事務が回避ないし軽減されたというものにすぎない。さらに、被控訴人互助会が実施する福祉貯金については、ことさら厚生諸費控除制度を利用するまでもなく、県共済条例第五条(乙五)に基づき、職員給与からの控除を行えば足りる。その処理は簡単で費用も厚生諸費控除制度に要する経費と比較すれば僅かである。

以上のとおり、厚生諸費控除事業補助金は補助の程度、規模とそれによってもたらされる効果との間に求められるべき比例原則に明らかに違反する。』

(被控訴人らの主張)

次のとおり付加するほか、原判決五一頁一〇行目冒頭から同五六頁一〇行目末尾までと同一であるから、これを引用する。

同五六頁一〇行目末尾のあとに改行して次のとおり付加する。

『 厚生諸費控除事業の補助金は年間約七五〇〇万円、県から給与の支給を受ける被控訴人互助会の会員は約五万人であるので、一人分の事務処理費は約一一〇円となり、決して高額とはいえない。口座振込に関する手数料が免除されていることを考えると、極めて低額の予算で口座振替が実現されている。厚生諸費の支払いを仮に全所属団体が各自手作業で行った場合、全体的にみれば大変な労力、負担がかかってしまう。

団体保険に関するマージンについては、被控訴人互助会とは関わりのない、収納団体と保険会社との間で発生する問題であるから、比例原則違反の問題は生じない。』」

第三当裁判所の判断

一  当裁判所は、控訴の趣旨2、3項のうち、平成一〇年一二月二六日から当審口頭弁論終結日である平成一二年四月二〇日までに執行が終わった財務会計行為について差止めを求める部分は不適法であるから、却下を免れず、その余の請求はすべて理由がないと判断するものであって、その理由は、次に付加、訂正するほか、原判決の「事実及び理由」欄の「第三 当裁判所の判断」のうち、原判決五七頁初行冒頭から同一一九頁二行目末尾までのとおりであるから、これを引用する。控訴人らが当審において提出した甲三五ないし四一をもっても、右認定、判断を覆すに足りない。

1  原判決五七頁七行目及び同五八頁末行の「権利能力なき団体」を「権利能力なき社団」と、同五七頁八行目「権利能力なき団体が、」を「権利能力なき社団というためには、」とそれぞれ改める。

2  同五八頁九行目から同一〇行目にかけての「別紙当事者目録記載の該当箇所記載の肩書地」を「当事者の表示記載の肩書地」と改める。

3  同五九頁三行目冒頭から同七〇頁二行目末尾までを削除する。

4  同七〇頁三行目「三」を「二」と改め、同四行目冒頭から同七行目末尾までを次のとおり改める。

「1 控訴人らは、被控訴人教育長に対して、愛知県公立小中学校教職員に関して、東海銀行との間に締結している給与の口座振込に関する協定につき、平成一〇年一二月二六日以降期限が到来する履行及び債務その他の義務の負担を中止し、右協定期間経過後、協定の更新、更改をしてはならないとの裁判を求めている。」

5  同七二頁七行目「あう得る」を、「あり得る」と改める。

6  同七四頁八行目冒頭から同七六頁四行目末尾までを削除する。

7  同七六頁五行目「5」を「4」と改め、同七行目「本件口頭弁論終結の日」を「原審口頭弁論終結の日の翌日である平成一〇年一二月二六日以降当審口頭弁論終結の日である平成一二年四月二〇日」と改める。

8  同七七頁初行「四」を「三」と改め、三行目冒頭から同頁末行末尾までを削除する。

9  同七八頁初行「2」を「1」と、同七九頁八行目「3」を「2」と、同八〇頁七行目「4」を「3」と、同一〇行目「五」を「四」とそれぞれ改める。

10  同八〇頁八行目「本件口頭弁論終結日」を「原審口頭弁論終結の日の翌日である平成一〇年一二月二六日以降当審口頭弁論終結の日である平成一二年四月二〇日」と改める。

11  同九二頁六行目末尾のあとに改行して次のとおり付加する。

「 又、控訴人らは、給与支払いの三原則を満たす給与振込が行われた後に、教職員の依頼に基づく口座振替が行われるならよいが、そうではないのに、C口座の名義人である教職員が被控訴人互助会に対し口座振替を依頼してさえおれば、C口座に振り込まれた給与が所定の給与支払日に払い出し得る状況になくても地公法二五条二項に違反しないというのは誤りである旨主張する。

しかしながら、前記教職員の給与振込実施要綱(原判示)第二二条所定のC口座への振込不能事態発生時における本人への現金支払の手当てをみても、右控訴人らの見解は独自のものとして採用しえない。」

12  同九四頁七行目冒頭に次のとおり付加する。

「 この点、控訴人らは、地公法二五条三項は給与の支給方法が同条二項の支給三原則に合致するしないにかかわらず、それとは別個に、教職員の給与の支給方法を条例で定めるべきである旨を規定したものと主張する。しかし、」

13  同九七頁四行目末尾のあとに改行して次のとおり付加する。

「 なお、甲二五の1ないし7、乙一二、一三によれば、自治省は、各都道府県に対し、口座振込制度の実施について、『給与の口座振込制度を実施する地方公共団体は、給与条例において給与の支払方法に関する規定の整備を必要とすること』、『地公法二五条三項に基づく条例上の措置については遺漏のないように留意されたい』と指導していること、青森県、福島県、群馬県、千葉県、神奈川県、大阪府及び福岡県においては、給与条例で給与の口座振込制度を定めていることが認められるけれども、他方、愛知県同様、教職員の給与の口座振込制度の根拠規定を人事委員会等の規則で定めている地方公共団体として、兵庫県、奈良県、熊本県、岩手県があること(乙三八ないし四一の各1、2、四〇の3及び原審における証人dの証言)が認められる。しかして、前記の判断(原判示)に照らすと、教職員に対する給与支給方法について条例、規則のいずれの方式で根拠規定を定めるかは各地方公共団体の立法政策の問題にすぎず、違法の問題ではないと考えられる。」

14  同九七頁九行目「規定」を「規程」と改める。

15  同九八頁三行目の末尾に次のとおり付加したうえ、同四行目「六」を「五」と改める。

「控訴人らは、更にこの点の主張は、給与振込制度の導入準備事務が同法二五条に違反することをいうものであるという。しかしながら、控訴人らの本項の主張は、財務会計行為としての本件協定の違法を基礎づけるものを主張しているのであるから、右振込制度が確立するまでの導入部分に財務会計行為があるとしても、右は自ずから本件協定とは異なる行政行為であるから、この点の控訴人らの主張は採用することができない。」

16  同一〇四頁一〇行目末尾のあとに改行して次のとおり付加する。

「3 控訴人らは、被控訴人互助会が実施する本件厚生諸費控除事業は教職員の福利厚生に関する事項とは性格を異にする、教職員の給与からの職員団体組合費などの天引事業にすぎず、同事業の重要性、緊急性もないから公益目的がなく、補助金行政に認められた裁量権を逸脱して補助金を交付する違法がある旨主張する。

しかしながら、甲九の6、乙八、一一、二七及び原審証人cの証言並びに弁論の全趣旨によれば、本件給与振込制度の採用によって、各教職員(愛知県全体で同制度の対象者は約五万人)はそれぞれの厚生諸費の支払いに際し、各教職員は自分の給与受取口座から厚生諸費分を現金として引き出し、それぞれの厚生諸費担当者又はその指定した支払口座に個別に振り込まねばならぬことになったため、このような厚生諸費支払事務に関する煩雑な手間を省く目的で、個々の教職員の利便のため、互助会員の厚生事業の一環として、被控訴人互助会が本件厚生諸費の口座振替システムを開発し、個々の教職員の希望に基づいて、口座振替の手続で厚生諸費の支払を口座振替の方法で行うことができるようにしたものであることが認められる。

右認定事実によれば、本件厚生諸費控除事業は被控訴人互助会による厚生事業の一環として実施されるもので公益目的があることは明らかであり、同事業に対する県からの補助金の交付は、被控訴人互助会の公共性及び本件厚生諸費控除事業の公益性に着目して行われているものと認められる。したがって、控訴人らの右主張は採用できない。」

17  同一〇四頁末行「3」を「4」と、同一〇五頁二行目冒頭以下同五行目末尾までを次のとおり改める。

「被控訴人互助会が地公法四二条を根拠とする愛知県職員の共済制度に関する条例に基づいて組織され、県の補助金を受けていたとしても(乙五)、同被控訴人は独立の寄付行為を持つ法人として活動しているのであるから、その事業も同被控訴人のものであるべく、本件厚生諸費控除の事業の一環として職員団体の掛金の控除を行ったとしても、これをあたかも愛知県の事業のごとく解して労働組合法七条三号の利益供与ないしはチェックオフの概念を類推する余地などない。控訴人らの主張は採用しない。」

18  同一〇五頁六行目「4」を「5」と改める。

19  同一一一頁四行目冒頭から同八行目末尾までを次のとおり改める。

「 しかし、被控訴人互助会が希望会員に対して本件厚生諸費振替事業を行う関係で事業者に該当しないのは次の(五)(1)に認定するとおりであるから、いずれにしても一般指定④には該当しない。」

20  同一一三頁末行末尾のあとに改行して次のとおり付加する。

「(3) もっとも、控訴人らは、東海銀行は、愛知県及び被控訴人互助会に対して、給与の口座振込という役務の供給に併せて、厚生諸費控除事業の事務受託を自行に限定させ、自行の子会社との間で業務委託契約を締結させ、又、給与振込制度を利用しようという教職員に対し、給与振込業務に抱き合わせて、厚生諸費控除制度の利用とこれに伴う自行口座の開設を強制し、不当に競争を阻害したものであるから、一般指定⑩に該当する旨主張する。しかしながら、控訴人らは、補助金交付が違法である理由の一つとして独禁法違反をいうものであるところ、補助金交付の主体である県が右行為に及んだ場合なら格別、東海銀行による右行為を前提とする右主張は失当というべきである。」

21  同一一四頁二行目「5」を「6」と改める。

22  同一一五頁三行目「6」を「7」と改める。

二  その他控訴人らは、本件補助金の支出は、五万〇七一九人の互助会員中で同じ会員でも本件厚生諸費控除制度を利用できない県立大学教職員等一三八六人との公平を失するとか、県教委の予算の内、現に緊急性の高い例えば外国人子女教育推進事業費と対比しても、たかだか職員団体の組合費徴収事務程度に当てる支出にしては多額に失し比例原則に違反すると主張する。

しかしながら、被控訴人互助会の事業は専ら本件厚生諸費控除のみではなく、様々の長期、短期給付、福祉事業が会員の掛金と県費補助金によって賄われていること(乙五、七、八)、平成六年度の被控訴人互助会の補助金は一九億五一七四万一〇〇〇円であるのに対し本件諸費控除制度に当てられた補助金は一八七二万円余にすぎないこと、控訴人らの主張のとおりとしても、便益の機会を受け得ないのは全体のわずかに二パーセント程度の会員にすぎないことからすれば、これらに対しては別の便益の方法を考慮することも無理ではないとみられること等を総合判断しても、本件補助金の支出が裁量権を著しく逸脱して違法なものとは認めることができない。勿論本来、目的も、それを行う機関も、異なる事業を金額のみで対比して裁量の当否を判断する手法も到底とることはできない。

三  結論

以上のとおりであるから、控訴人らの請求中、被控訴人教育長及び被控訴人知事に対する原審口頭弁論終結の日の翌日である平成一〇年一二月二六日以降当審口頭弁論終結の日である同一二年四月二〇日までの各差止請求はいずれも不適法であるから却下を免れないけれども、その余の請求は、被控訴人a、b及び同互助会に対する請求も含めて、いずれも理由がないので、同部分に関する原判決は相当であって同部分に対する本件控訴は理由がない。

よって右にしたがって行訴法七条、民訴法六七条二項、六一条、六五条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 笹本淳子 裁判官 鏑木重明 裁判官 戸田久)

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